強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「そんなことない……。」
「あんなにショック受けてたのに?」
秋文が優しくしてくれる。
それなのに、千春は秋文の言葉を聞くと、何故かイラッとしてしまうのだ。自分の気持ちがわからない。自分の感情が制御出来ない。
「………忘れられるはずないじゃない。だって、好きだったんだもん!そんなに簡単に忘れられないよ……。」
気づくと、大きな声で彼怒鳴るような言葉が出ていた。いつもの冗談の言い合いではない。
本気で、怒ってしまったのだ。
それに気づいた頃には、もう遅い。
秋文の驚いた顔を見て、ハッとなり少しずつ冷静になるが、もう後には引けない。
「憧れてた優しい先輩だから。いつも、私に優しくしてくれてたのに、急にフラれて隣から居なくなってしまったんだから、仕方がないじゃない。………。私、そんなにモテるわけじゃいから。彼女がたくさんいる、秋文とは違うよ。」
「………なんだよ、それ。」
「ぁ………。」
秋文は、低い声で千春の話しに反論する。
いつもとは違う、鋭い瞳で千春を見つめ、声は別人のような大人の男の物になっていた。
「彼女はいないって言っただろ。それに、お前が好きだとも言ったはずだよな?……おまえ、俺の気持ちが嘘だとでも思っているのかよ?」
「……そんなことなぃ……。」
「あるだろっ!」
秋文の強い声が聞こえ思わず目を閉じると、ドンッと肩を押されたのがわかった。抵抗する暇もなく、千春はクッションの上に押し倒される。
驚いて目を開けた頃には、秋文が千春に覆い被さっており、間近にある彼の綺麗な顔にドキッとしてしまう。
けれど、彼の顔には怒りが見られ、緊張よりも怖さを感じてしまう。秋文を本気で怒らせてしまったのだ。
「俺は、我慢するのを止めるって言ったよな?お前が俺のものになるなら、なんでもやってしまいそうなんだよ。………こうやって、押し倒して、無理矢理キスして、それ以上のことをして……。体から俺の物にして、俺を好きになってくれたって構わないんだ。順番や手段なんて、どーでもいい。おまえが、俺の気持ちを本気だと思わないなら……関係ない。」
怒っているはずの彼の表情は、少しずつ悲しみを帯びてきて、最後の方は泣いてしまうのではないかと思うほど、悲しんだ瞳で、千春を見つめていた。
千春は、秋文を怒らせたのではなかった。
秋文を傷付けてしまっのだ。
そう気づいた時。
千春はやっと冷静になった。彼を傷付けてから、怒りが静まるなんて、最低だと思った。