先生と17歳のあいだ
6: 鮮やかな校舎と胸の痛み
*
「独り占めできていいな……」
私は数学準備室で優雅に泳いでいるカメの水槽を見ていた。
先生からの愛情をたっぷりともらっているカメは以前より少しだけ大きくなったような気もする。
夏休みが明けて学校では二学期がはじまっていた。
規則では今日から冬服を着用してもいいことになっているけれど、まだ夏の暑さは続いていてさすがにブレザーを着ている生徒はいない。
そんな中でこの人だけがTシャツからパーカー姿になっていた。
「独り占めしたいならお前も飼えばいいじゃん」
郁巳先生はマグカップにコーヒーを入れて机へと戻ってきた。
正直、私はTシャツよりもパーカーの先生のほうが好き。
だって大きめのフードが可愛いし、服の上からしてる腕時計も最初はどうかと思っていたけれど、やっぱりこの格好のほうが私はしっくりとくる。