好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
俺の隣にいたあいつ
デビュー前、あいつは普通の中学生だった。

あいつとは保育園も同じ、小学校も同じ、要するに幼なじみってやつ。

中学三年になった今も、なぜかまた同じクラス。

休み時間、あいつはいつも俺の隣の席で眠っている。

眠っているというより、教室の仲間とは関わりたくない……そんな感じ。

彼女は頬杖をついたまま目を閉じて、自分だけの世界に入っている。



蒸し暑い七月の教室に、窓の隙間から風が吹き込む。

その瞬間、あいつは顔を上げ、まだぼんやりしている視線を窓の外へ向けた。

彼女の両目を隠していた黒髪が風に流れる。



あいつは何を考えているんだろう……

彼女の視線の先には、グラウンドで体育の授業をしている先輩の姿があった。



肩まで届くくらいの黒髪に、太陽にあたってないんじゃないかと思うくらい白い肌。

キリッとした大きな黒目に薄いピンクの唇。

普通の女の子にしておくのはもったいないほどの顔立ちなのに、彼女はいつも自信なさげにうつむく。

その姿があまりにも綺麗で儚くて……

俺は思わずスマホのシャッターを切った。
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