好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
アイドルになったあいつ
数ヶ月後……

俺に残されているのはあの日のほのかの涙と、使い道のわからない10万円。

まだ手をつけられずにいた10万を封筒に入れて、俺はCDショップへ出かけた。

今どきCDなんてネットで買えばいいだろう。

でも、俺はそのCDが店頭に並んでいるのが見たかった。



俺にとっては大金が入った封筒を握りしめ、まっすぐCDショップへ向かう。

店に入ると、探さなくてもわかるくらい目立つ特設コーナーにそれは置いてあった。

アイドルのCDなんて買うのは初めての俺は、周りをキョロキョロうかがいながらそのコーナーに向かう。



あった……あいつのCD。

snow mist(スノウミスト)とライトブルーの文字でグループ名が書かれている。

俺はまだ初々しいアイドルグループのデビューシングルを手に取った。



「あいつ、センターかよ……」

思わずつぶやいてしまった。

可愛い子が大勢いるアイドルグループで、あいつはセンターに立っていた。
< 31 / 210 >

この作品をシェア

pagetop