死にたい君に夏の春を
3分経ってラーメンを食べようとしたら、栞が目を覚ます。


「……ん、あれ」


「おはよう」


寝ぼけた顔で、僕を見上げる。


「……おはよ」


「ラーメン、食べる?」


「うん」


僕はカップ麺をもうひとつ取り出し、お湯を入れる。


彼女は目を擦りながら、上半身をゆっくりと起こした。


不思議そうに、周りをキョロキョロと見回す。


「もう16時だよ」


「え、嘘」


「本当」


僕はラーメンをフォークですくって、1口食べる。


「……一日無駄にしちゃった」


「今日ぐらい休んだ方がいいだろ。明日は夏祭りなんだし」


「あ、そっか。夏祭りあるんだ」


彼女は立ち上がり、僕の前に机を隔てて椅子に座った。


僕がラーメンをすすっている間、ずっと彼女が凝視する。


気まずくなってつい目を逸らしてしまう。


「な、なに?」


「そういえば、夏祭りってなんなんだろうなーって」


「ならガン見せずにそう言えよ……」


僕はスマホを取り出して、調べ物をする。


そして画像をタップし、栞に見せた。


「これ」


屋台や、花火が写った写真。


スマホを僕から取って、画面をじっと見る。


それからすぐに僕を見た。


「ねぇ、なんでこの人たち和服なの?」


「浴衣だよ。
祭りの時だけの特別な衣装みたいなもん」


ふーん、とだけ言ってスマホに視線を戻す。


祭りで浴衣を着るということすら知らないのか。
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