停留所で一休み
第16話 人生の選択
扇屋で飲んでいたら、すっかり夜中になってしまった。

お客さんも私一人に。


「また来るわ、ギッちゃん。」

「おう。気を付けて帰れよ。」

「あーい。」

右にフラフラ左にフラフラと、体を揺らしながら、店を出た。

「家、どっちだっけ……」

とりあえずどっか大きな道路に出れば、タクシーを拾えるだろう。

そう思って、大通りに向かって歩きだした。


「うぷっ……」

私は口を押さえると、店の脇に入った。

「……吐きそう。」

吐きそうで吐けない。

それはそれで、苦しいんだな。


そんな時に聞こえたきた、タイミングの悪い会話。

「東京に行くって本当?」

「うん。って言ってもまだ先だけど。」
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