それは誰かの願いごと
「和泉さんがいるからだよ」
きっぱりと言い切る諏訪さん。
「眠ってる間、ずっと和泉さんの声が聞こえていた。和泉さんがオレに『好き』と言ってくれて、意識が戻ったとき、いちばんはじめに目に入ったのが和泉さんだった。これで浮かれるなっていうのが無理だろ?」
そんなこと訊かれても、素直に頷けるはずもない。
わたしは、わたしの告白が諏訪さんに伝わっていたことに、嬉しいというよりも、途方もない恥ずかしさが上回っているのだから。
けれど、幸せそうに言った諏訪さんが肘を使って体を起こそうとしたそのとき、ちゃんと力が入らずに、枕に逆戻りしてしまいそうになったのを見て、
とっさに、わたしは恥ずかしさなんて忘れ、腕をのばしていた。
「大丈夫ですか?」
諏訪さんの背中に手を差し込み、支えるつもりで、もう一方の手を肩にかけた。
けれど、
「―――-―っ」
思っていた以上に接近していた顔と顔に、ハッとしてしまった。
こんなに近くに諏訪さんがいるなんて、信じられない。
あの諏訪さんの目がわたしだけを見ているなんて、考えられない。
けれどなぜだか視線を外すことはできなくて。
数秒、見つめあったままの沈黙が続いて、
それから、諏訪さんが向こう側の手でわたしの頬に触れて、
その綺麗な顔がさらに近付いてきて――――――
キス、される………
その予感に、思わずギュッと、両目を瞑った。