それは誰かの願いごと




ここにコップ半分の水があります。
あなたは、「もう半分しか残っていない」と思いますか?
それとも、「まだ半分も残ってる」と思いますか?



有名な、ポジティブかネガティブかを診断する質問だ。その信憑性はともかく、一度はどこかで見たり聞いたりしたことがある人も多いだろう。

それによると、「まだ半分」と言った人はポジティブで、「もう半分」を選んだ人はネガティブの部類に入れられるらしい。

確かにその通りかもしれない。その分析に異を唱えるつもりは微塵もない。

でも。


「そもそもこのお水の量は多ければ多いほど良いという仮定なの?お水と見せかけて何か害がある透明な液体ではないの?もしそうなら分量は少ない方がいいわよね?どうなんだろう?だってこのお水、いったい何のために使うの?コップに入ってるからって飲み水とは限らないわよね?だいたい、今そんなに喉が渇いてるわけじゃないもの。でも待って、もしかしたら誰かからの差し入れかもしれない。そうしたらその人からの好意を踏みにじってしまうことにならない?どっちなの?……ああっ!こんな風に悩むのならもうお水なんかいりません。もういらないから、どうか早くお持ち帰りください!」


……というのが、正直なわたしの回答だった。


つまり、ポジティブとかネガティブ以前に、わたしは極度の怖がり、心配性、小心者、そして呆れるほどに考えすぎる性格なのだ。


例えば、なにか良いことがあっても、その代償に何か悪いことが起こるんじゃないかと素直に喜べなかったり、逆に良くないことがあったら、それがもっと酷くなるのではないかと疑心暗鬼になってしまう。

そういった点においては、究極のネガティブと言えるのかもしれないけれど。

…実に厄介な性格だ。

こんな性格だから、人から褒められてもその裏を読もうとしたり、なんだったら何か騙されるんじゃないかと疑惑を持ったり警戒したりすることも珍しくはない。

……実に実に厄介な性格だ。









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