あり得ない男と、あり得ない結末

電車ももうすぐ着く。
イレギュラーな一日は終わり、日常に戻る。
だけど私の胸のモヤモヤは、おそらくこのまま晴れることはない。

……日常に、戻れるの?
こんな不安定な気持ちで?

さっきのキスをなかったことにして、片桐さんと結婚するの?

そんなことできるの?

再びメールが届く。やはり相手は父で、急いでいるのか【駅まで迎えに行く】と今の場所を聞いてきた。
駅に着く時間を打ち込みながら、これを本当に送ってしまっていいのか考える。

父に、阿賀野さんと一緒に居るところを見られたら、どうなるんだろう。
怒られるのか、ふしだらな娘と呆れられるのか。どっちみち、彼の信頼を失うことは必死だろう。

「父が、……迎えに来るそうです」

「……そっか。お前やばいんじゃない? 俺なんかと一緒に居るって知られたら」

私は小さく頷く。
だけど、いっそそうなったら、と考える自分がいる。
父が望む未来を、打ち崩すことができたら? なんて。
一体私は何の魔法にかかったというのだろう。今まで、父に対して反発したいなんて思ったことはなかったのに。
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