恋する24時 2

 何で、こんな所で

 料理を教える羽目になったんだろう?



 目の前には、まるで接点のなかった

 企画部部長の加藤さんが

 包丁片手に野菜を切っている。




「月森さん、次はどうすればいいかな?」



「はい、次は、玉ねぎを微塵切りにして下さい…―――」




 わたしは、見本を見せるため

 手早く玉ねぎの皮をむき半分に切って

 微塵切りのやり方を教える。



 加藤さんは、まるで魔法でも見ている様な

 キラキラした目でそれを見入っていた。



 結構年がはなれているはずの加藤さんが

 まるで少年のような顔で見るから

 微笑ましくて、ついわたしも笑顔になる。




「では、加藤さんもやってみて下さい」




 わたしは、残りの玉ねぎを置いて

 まな板から離れると

 神妙な面持ちで加藤さんが玉ねぎを(つか)む。




「難しそうですね……」



「慣れれば、簡単に出来る様になりますから」




 玉ねぎの微塵切りに悪戦苦闘する

 加藤部長を見守りつつ

 わたしはため息をついた。



 出会いを求めたのに

 会った人がよりによって

 会社の人だなんて……。



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