しあわせ食堂の異世界ご飯3
笑顔でそう告げたのは、アリア・エストレーラ。十六歳。
 深い茜色の髪を水色のリボンでひとつに結び、ぱっちり開いた瞳はピンクがかった蜂蜜色。
 水色のワンピースには白色のストライプが入っていて、袖口はリボンで絞っている。料理をするときには、純白のエプロンを付ける。
 一見、街の定食屋で働く女の子なのだが――その実、ジェーロ帝国の皇帝の妃候補としてやってきた、エストレーラの第二王女だ。
 アリアのほかにも妃候補が四人もいて不安要素があるけれど、皇帝であるリベルトはほかでもないアリアを選んでくれた。
 今はまだ王城内の派閥争いがありアリアを迎えにいけないと言われているが、必ず迎えにいくと約束をしてくれている。
 なので、アリアはしあわせ食堂で働きながらリベルトが来てくれるのを待っているのだ。

 しかし、アリアにはリベルトにすら言えない秘密がひとつある。
 それは前世の記憶があるということ。
< 2 / 201 >

この作品をシェア

pagetop