リンク・イット・オール



優しい香りに包まれて、どれくらいそうしていただろう。

ようやく涙が止まった私に、真紘先輩は笑ってまた頭を撫でてくれた。



それから彼は、帰る前にとお母さんに手を合わせていってくれた。

手を合わせ、目を閉じる。なにか話しかけているのだろうか、と思うほど長い時間をかけて。



目を伏せた横顔を見つめながら、私は心から思う。

あの日、出会えたのが彼でよかった。

同じ学校で、再開できて、声をかけてよかった。



今ここに彼といられる幸せが、嬉しいと思ったんだ。







その夜、深い眠りの中夢を見た。

それは、お母さんが笑って手を振る夢。



ごめんなさいもさよならも言えなかった。

けど声を振り絞り『ありがとう』と叫んだ私に、お母さんは笑顔のまま消えていった。



目を覚ますと、白けた朝方の空にうっすらと虹がかかっていた。

それはまるで、この心とその心を、つなぐように。





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