そうして僕らは恋になる

見慣れぬ景色、少しの戸惑いを胸に僕はそこにいた。

「あなたが新入生の佐市君ね。どうぞ入って。」

高校生になると同時に、馴染みの地を離れようと決心を固めていた。

あの場所から遠くへ行ければ、それで良かったのだ。

優しい木の香りさえ鼻につく此処は、僕が三年間高校へ通う為の拠点に過ぎない。

「星流園へようこそ、あなたはもう家族同然よ。分からない事があったら何でも聞いて。」

祖母が紹介してくれたシェアハウス<星流園>

唯一、僕の味方をしてくれる柔かい表情で笑う祖母が僕は昔から大好きだった。

『弥、辛い思いばかりさせてすまないね…。私の足がもっと言う事を聞いてくれれば、今すぐにでもお前を自由にしてやれるのに。』

初めて自分の中に秘めていた思いを告げた時、祖母は静かに頷きながら僕の話を聞き終えた後言った。

『お前の人生だ、好きに生きなさい。ただ、何も知らぬ土地に行くのはさぞ大変だろう。私の古い友人の姪が宿舎をやっているようだから、そこでお世話になってみたらどうかねぇ…。』

祖母の友人の姪、かつシェアハウスの管理人の奏さんは、母と同じくらいの年齢の割には綺麗な顔立ちをしている。

「あの…僕以外に何人くらい居るんですかね。祖母に薦められてきたので、詳しい事を何も聞いていなくて。」

外観から予想すると大体5、6人程度が妥当だろう。

「あら、それじゃあ千代さんのお孫さんって佐市君の事だったのね。ここで生活しているのは私と佐市君を含めて7人よ。内訳は三年生が1人、二年生が3人、一年生があなたを含めて2人よ。」

食事はシェアハウスの管理人、辻さんがやっているようで、お祝いをするとかで下準備をしに行ってしまった。

置き去りにされてしまった僕は、家の中を見て回ることにした。

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