敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「作り笑いはいいとして、演技ってバレてたんだ……。だって全然よくなかったんだから仕方ない……」


こんな私の愚痴っぽい呟きも、周囲には聞こえはしない。

なぜなら彼とのデートはいつも三ツ星シェフのいるレストランや、ホテルの最上階にある静かで落ち着いた会員制のバーばかりだったのに、別れる女にはお金をかけたくないのかオフィスのそばの、ランチタイムで賑わいまくりのカフェで別れ話を切り出されていたからだ。

たった今フラれたにも関わらずほとんどダメージを受けていない私は、やはり彼のことはこれっぽっちも好きではなかったのだと思う。

私が好きだったのは彼自身ではなく、彼の肩書き、将来性だ。それとほんのちょっぴり顔がいいところ。
だけどもしかしたら顔は他の人が見たらカッコいいと言うのかも。

ただ私の周りには超絶イケメンが二人もいるので美的感覚がズレている可能性が高い。

というかそもそもランチがてら別れ話ってアリなんだろうか。
そんなことを思いながら黙々とここのカフェで一番人気のオムライスを食べ続けていたけど。
いつも通りの味のはずなのに、どこか美味しく感じない。フラれたことがショックだからという訳ではなく、それはフラれた理由にあった。

フラれたこと自体は性格やその他もろもろが合わないのだから、まあ仕方がないと納得できる。
だけど『作り笑い』と言われたのはこれで3度目なのでさすがにちょっと引っ掛かる。

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