冷酷御曹司様と政略結婚したら溺愛過剰でピンチです
第二章 新婚初夜は涙に濡れて
つつがなく神前挙式を終えると、その後は世界有数の五つ星ホテル『ホテル・エテルニタ東京お台場』で盛大な結婚披露宴が行われた。

お色直しでは、吉祥模様が描かれた上品な赤い色打掛へ着替え、編み込みを施した洋髪に藤下がりの揺れる花簪を飾ってもらい、紋付羽織袴姿の透さんと共にテーブルを回る。

橘家側の招待客は少なく親族や私の友人、それから母の生け花の先生である伊能先生夫妻だけだったが、真海家側の招待客は真海ホールディングスや真海不動産の関係者や取引先の方などが多く、挨拶を終えるのも大変だった。

そうして、透さんから告げられた『必要な時だけ〝妻〟の顔でいてくれ』という言葉通りに、ただひたすら自分の空想上の『透さんの良き妻』を演じることに努めた二時間半も、ようやく終了。

一日掛かりだった結婚式が終わり、結納の儀でも訪れたホテル内にある日本料理店で両家の家族を交えて夕食をとった後、ホテルのロビーにて解散となった。

神前挙式や披露宴への緊張感が抜け、どっと疲れが押し寄せてくる。
そしてそれ以上に、先行きが見えないことに対する心配と、今度こそ本当に透さんと二人きりになってしまうのだという不安が、涙腺を刺激した。
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