ボクは初恋をまだ、知らない。
「ええっ!?津田さんに告白されたぁ!?」

部活の時間、
舞台袖で3人にその話をすると、案の定大声でのリアクションが返ってくる。特に啓介。

「しーっ。声が大きいよ。」

「それで?!」「なんて答えたの?!」

「友達からでもいいかな?って言った。」

3人はボクの返事に、各々変なポーズと表情で驚きを表現している…。演劇部でもおかしくない位の表現力の皆と反対に、ボクは正座して真顔でいる。

「Bクラスで1番、可愛い子ぢゃねぇか…」

そう言い遺し啓介はそのまま舞台に倒れて死んだ……フリをしている。

「……俺、気づいてたわ。そういえば」

翔の何か思い出したような言葉に、
ボクは興味を持った。

「えっ!?どうゆう事?」

「…津田さんの千影に対する視線かな?
同性見てる表情とは違ってた。」

「…そう、だったんだ。」

翔は、誰かの"好きな人"に敏感だ。
観察力があるのか、普段自分が女子からの好意を浴びてるからなのか理由はまぁどっちもなんだろう。

「つーかさ…千影って要するに」

むくっと起き上がった啓介が、真正面からボクに問いかけた。

「男と女、
どっちが好きか分かってないんだろ?」

啓介の真剣な表情は、
ボクに緊張感をもたらした。

「…うん。そうだと、思う。」

薫が心配そうな目で見てくるが、
ボクには、"友達からでいいなら"と返事したのには理由があった。

「…初めて、告白された時にさ。
勇気出して言ってくれたんだろなって感じた。
だから、それが男でも女でも。
ちゃんと向き合ってあげるべきかなって。」

「……ふぅん。なら、仲良くしてみ。」

啓介は何となく、最初のリアクションとは違う反応に切り替わった。少し冷たい…?

「こればかりは、千影次第かな。
相手が女のが気に障るけど…ね?翔」

「……そうだね。」

その時突然、ボクらの方にバスケットボールが飛んできた。弾むボールがボクの手元に転がってくる。

「すいませーん!」

バスケ部の男子が投げて欲しそうだったので、
近くまでボクがボールを渡しに行った。

「…啓介、心配なんでしょ。」

「そりゃな。…まぁ、見守ってあげてくれ」

クラスの違う啓介は、
ボクと同じクラスの薫に託すようにそう言った。

そんな啓介の様子に、
翔は気になっているようだった…。
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