ボクは初恋をまだ、知らない。

晴れてボクは、4月から専門学生になった。

[朝日服飾専門学校]

夢を追いかける人達の集まり。
ボクは26期生デザイン科の一員になる。

「月村さん?って、どっち?」

「え?」

最初に友達になったのは、
ボクに性別を尋ねてきた女の子だった。

「えと…女だけど?答え合ってるよね?」

「女の子だったんだぁ!良かった!話しかけて!電車で一緒だったんだよ!
もしかしたら家近いのかもって思って!」

その子は腰まで長い黒髪をふわりと揺らし、ボクに気さくな笑顔を見せた。
ただ少しだけ変わってるといえば、
毛先から20センチくらいピンクに染まっている。

「えっと…」

色々突っ込みたい所満載でどう話を返そうか悩んでると、その子は気づいて言った。

「あたし、デザイン科の中村るな!
月村さんと同期だよ!よろしくね!」

握手を求められ、交わすと彼女はじっとボクを見つめた。
長い睫毛に、ピンクのアイシャドウ。
服もドーリー系の甘いワンピースを着ている。明らかにボクとはまるで正反対の女の子だけど、何となく雰囲気は薫と似ていた。

「よろしく。月村千景だ。」

「知ってるよ!月村さん、ちょっと注目の的だったから。」

「えっ!?どうゆうこと?」

ニコニコしながら、階段の手すりにもたれてボクをまた、大きな目で見つめた。

「男女どっちだろうってね。入学式の時から皆話してたよ。」

「あーなるほどね。よくある事だよ。
中村さんも気になってた訳だ。」

ボクは少し眉を困らせて笑った。

「るなでいいよ!あたしはつっきーって呼ぼうかな!」

「…ぢゃあ、るな。
もうすぐデザイン科の集会あるし、
一緒に行こうか?」

「うんっ!行こ行こ!」

彼女は、ボクの腕を引いて階段を登っていく。
その手はとても懐っこかった。


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