だから何ですか?Ⅲ



気が付けば押し付けるような口づけを与えてしまっていたのだから。


それでも決して濃密とは程遠いもので、間近で捉える亜豆のもどかしい表情と言ったら。



「・・・・で?・・・何?どうしたの?・・・・どうして欲しいの?」


「っ・・・・いじ・・わる」


「フッ・・・だって、俺から動いたらまた『するから』なんて責任転嫁されそうだし」


「っ・・・」


「ほら・・・お前から言えって」


「っ~~~」



本当・・・2人して馬鹿か阿呆か。


発情期全開。


結局は同時に同じ欲求に襲われて、それを切り出すのがどちらかというだけの事。


だったら・・・



「じゃあ・・・引き分けで、両方からって事でどう?」


「・・・・・」


「それで良かったら・・・煙草消すけど?」



どう?と手に持ち続けていた煙草を示して、未だブスっと表情を歪めたままの亜豆を覗き込む。


お互いにスイッチはしっかりかっちり。


ここで引き下がる方がもどかしく苦痛であるのは明確。


それでも尚焦らすかの様に不動で見つめてくる姿に念押しの様に小首を傾げると、ようやく静かに動きを見せた亜豆が俺の手から煙草を抜き取ると灰皿へ。


さっき潰された煙草の上にころりと俺の吸っていたものが転がると、身を捻っていた姿がこちらを向き直り限界だと唇を塞いで貪ってくる。


そんな体を抱きしめて、頭に手を添えるとこちらからも貪り返して。


フッ・・・相変わらず、



「・・・・下手くそ」



こちらから攻め込んでしまえばあっさりとペースを乱され息が上がる姿は健在。


それにどこか歓喜を覚えながらからかう様に突っ込めば。



「・・・嬉しいでしょう?」



余裕のない息遣いの中でフフッと笑い、そんな言葉で俺の心を擽り惹きつける亜豆もまた健在。


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