星空電車、恋電車
「どのみち今できることは倉本君からの連絡待ち。で、京平ってオトコに関して言えることは一度しっかり怒ってやれってことだな」

「怒ってやれ?」

「そう。そいつの勝手な想いで倉本君と千夏ちゃんがすれ違ったのは事実なんだから一度しっかりと言ってやれ。その後でヤツとどう付き合っていくかを考えればいい。向き合うのはそれからだ」

「そっか」

一度しっかり怒る。
そうだ、どついてやればいい。
私のこの数年分の想いを、どんな気持ちで過ごしたかきちんと思い知って欲しい。

そして、謝ろう。
直接やりとりしなかった樹先輩と私の事を。
間に京平先輩を入れてしまったことで迷惑をかけてしまったのだから。

うん、ちょっとすっきりした。

「山下さん、いつもありがとうございます」

目の前に座る心の兄に丁寧に頭を下げると「気にしないでいいよ」と頭を撫でてもらった。

心の兄はどこぞの映画俳優以上の魅力的な笑顔を浮かべていて店の中がざわついた。
恵美さん毎日大変だろうなと思ったのは言うまでもない。

身近にいるイケメンは程よい方がいい。こんな上等のオトコじゃ毎日心配でたまらないから。

「でも、京平先輩が秘密にしてたこと、なんでわかったんですか」

恵美さんは何回かカフェに顔を出した京平先輩の姿を見たことがある程度、山下さんに至っては接点がない。

「恵美としてた会話やラインの内容を聞く限り、彼が一番千夏ちゃんの近くにいた男だったしね。そんな可能性があってもおかしくないと思ってたよ」

「私は全然そんなこと気が付きませんでした・・・」

「彼の方も自分の気持ちと友情との間で板挟みになって苦しみながら葛藤してたんだろうね。だからと言って許されないけど。」

いろいろと思うこともあるけれど、やっぱり私と樹先輩の問題だったのに直接やり取りしなかったのが一番悪かったと思う。

あの時、お互いの連絡先を教え合うという選択肢はなかった。

樹先輩は私が自分の存在に縛られないようにと。
私は樹先輩の重荷にならないようにと。

それがこんな結果になるとは思わずに。

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