星空電車、恋電車
春。
まだ慣れない新生活。
今日も大学は構内のあちこちで新入生をサークルに勧誘する学生たちで溢れていた。
ーー星空研究会
渡されたビラには星空の写真と新入部員募集の文字。
『星空を愛する人、愛する人が星空を好きな人、星空を語りたい人、天体観測をしたい人、誰でも何でもお気軽に参加OK』
そして、ビラの下部に『春の流星群、夏の流星群、冬の流星群観測会あり』と記載されている。
春の流星群…
ふたご座流星群か。
ーーー私の苦い思い出。
「ね、ね、キミ。もしかして興味ある?よかったら、説明会を兼ねた食事会に参加してみない?」
立ち止まり無言でビラを見つめている私に男子学生が声をかけてきた。
顔を上げると、アイドルもどきの人懐こい笑顔で私を見下ろすイケメン男子学生と目が合った。
黒くてくりくりとした大きな瞳にサラサラのダークブラウンの髪。長身で痩せすぎずゴリマッチョでもない体型、センスのいい清潔感のあるファッション。
目の前に誰もが二度見してしまいそうなイケメンが立っていた。まるで芸能人みたいキラキラオーラを纏って。
「新入生は無料で飲食できるよ。あっちの机で登録だけしてくれればいいし、話を聞いて嫌なら入部しなくてもいいんだ」
このサークルに興味があったわけじゃない。このビラに書かれた文字に反応してしまっただけなんだけど、とは言い出せないでいるとアイドルもどきさんは更に説明を始めてしまう。
「星に興味ないかな?なくても専門家から話を聞いてるとそのうち星の虜になるよ。それにうちは煩い規約はないし、インカレサークルだから他の大学の人とも知り合いになれて人間関係が広がるし、なにより楽しいから。ぜひ、どうかな」
アイドルもどきのイケメンに笑いかけられて悪い気はしないけど、若干の胡散臭さは否めない。
「あ、キミ、今ちょっと怪しいって思ったでしょ」
アイドルもどきさんがくすりと笑った。
え、バレた?
私の心を読んだような言葉に私は気まずい笑顔を返した。