星空電車、恋電車
「走って逃げられない場合だってあるんだから、夜の外出はホントに気を付けてね」

恵美さんの心配そうな顔に私は大きく頷いた。
「まだ、行くって決めたわけじゃないです」

「事前申し込み不要だから、出来ればってことでいいよ。来たら俺に声かけて。安心安全な女子メンバーに解説頼んであげるから」
山下さんが何か意味ありげな視線を恵美さんに向けながら言った。

私がとりあえず「はい」と頷くと、にこりと柴田さんと山下さんは笑顔を見せた。

そうして「あ、ねえねえキミ達、もうサークル決まったぁ?」と山下さんは私の背後を歩いてきた他の新入生の二人組男子に話しかけている。
そこに柴田さんも加わり「星空、興味ない?」と美しい笑顔を初々しい新入生男子に向けていた。

「あらら、あっちは柴田さんの美貌にやられそうだね」
その様子を見ながら恵美さんがクスリと小さく笑う。

垢ぬけない素朴な感じの新入生男子二人の視線は洗練されたスタイルの柴田さんにくぎ付けになってこくこくと頷いている。私は知らないけれど何とかというアイドルに似ているとなればなおさらだろう。

こうして私は柴田さんと山下さんの勧誘から解放されたわけだけど、おそらく自分の同級生であろうその男子学生二人は食事会行き決定かな。
こんな調子で男子学生は柴田さんに、女子学生は山下さんに惹かれて勧誘されちゃうんだろう。
「千夏ちゃんは山下のこと見向きもしてなかったみたいだけど、ああいうのタイプじゃないの?」
恵美さんが不思議そうな顔をする。

茶髪の長身、目から星が出てるんじゃないかってキラキラビームが出ていて、薄い唇に口角がキュッと上がっている。顔のパーツ配置は完璧に近い。やや幼く見えそうだけど、そこは長身がカバーしている。
アイドルとして芸能界にいたとしても不思議はない。

「タイプかそうでないかって言うと、まあタイプではないです。イケメンは好きですけど、見るだけでいいんで」

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