星空電車、恋電車
部屋で寛いでいると、隣の部屋で物音がし始めた。どうやら恵美さんが帰宅したらしい。
急いで部屋を出て恵美さんの部屋のインターホンを押す。

「はーい」
すぐに中から恵美さんの声がしてガチャリとドアが開き、笑顔の恵美さんが顔を出した。

「こんばんは。これ、うちの親が送ってきた果物のおすそ分けです」
実家から送られてきたミカンが入った袋を手渡し「それと・・・」と話を切り出す。


「ええ?山下と一緒に天文台に?」
眉間にしわが寄って恵美さんの表情が変わった。

「ええ、どうしても行ってみたいんですけど、ユキもいづみも予定が合わなくて。でも、山下さんとふたりっていうのもなんですし、できれば恵美さんが一緒に行ってくれないかなと思ってー」
上目づかいでお願いをすると、「・・・仕方ないなぁ。で、いつ?」と恵美さんがしぶしぶと頷いてくれる。

「ありがとうございます」
やった。やったよ、山下さん。私は心の中でガッツポーズをした。

すっかり山下さんの応援団になっている私ができるのはこんなことくらい。
それも、恵美さんが本気で彼のことを嫌がっているのなら協力はしないけれど、私の想像では恵美さんも山下さんに好意を持っているんだと思う。

あくまでも勘なんだけど。
私が山下さんの話をすると恵美さんの表情が変わる。嫌がっているだけには見えない。それよりもかなり気にしているように思うのだ。

もしも二人が同じ気持ちなら・・・お似合いだと思うんだよね。
美男美女ってことじゃなくて、お互い思いやりのある面倒見のいい性格だってこと。
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