不良な彼と恋の契約
柔らかく、触れる手は優しく私を扱う。
怖いイメージは、ない。

あの人達が、見えなくなる場所まで行けばその手は不意に離れた。


「行けよ。
今度は捕まるなよっ」


悪い人じゃないみたいーー。

「あの、仁くんのこと知ってるんですか?
なら、教えて欲しいんです。
ユリさんって仁くんのーーっ」

聞いて何になる?
だけど、今のままじゃ、気になって仕方ない。

「仁に聞けよ。

彼氏だろうが。あーまあ、きっと言わねーだろうな」

誰であろうと言わないーー、そう言われている見たいだ。

だけど、知りたい。
私がいくら聞いても、はぐらかされる。

「ーーっ、教えてっ下さいっ」

溜まりに溜まった涙が、頰を加速した。


「ちょっ、泣くなよ。
何、泣いてんだよ。
こんなとこ仲間に見られたらーー「あーー、輝が女の子泣かせてる!いけないんだ!!」


チャラい叫び声に、振り向いたら今朝の人がいた。

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