お日様のとなり

「あのままあそこにいることが、金魚たちにとって本当に幸せなのか、それは分からない。でもさ、全く知らない世界に行くことって怖いかもしれないけど、もしかしたらその世界が金魚にとってすごく幸せで心地の良い場所になるかもしれない。それに、たった一人じゃないよ」

「え……?」

「みあがいるじゃん」

「私……?」

私が傍にいることで、金魚は寂しい思いをしないのかな。

私は、どうだったんだろう……。


小さな頃に、私は一人おばあちゃんの家に連れて来られた。

お父さんとお母さんは、私が2歳の時に離婚したのだと、大きくなってからおばあちゃんに教えてもらった。

たまに断片的に夢に見るけれど、お父さんとお母さんと一緒に暮らした記憶はほとんどない。

それでも寂しい思いをしなかったのは、おばあちゃんがずっと私の傍にいてくれたからだ。

私がおばあちゃんの家に預けられなければ、苑実や大蔵、それにイチくんや写真部の人たちとも出会うことはなかっただろう。

それに、あの時……。

『あ、バレちゃった?』
『笑えないなら、撮る側になればいいんじゃない?』
『こっち、付いてきて』


裏庭で偶然イチくんと出会って。

私を新しい世界に連れ出してくれたのはイチくんだった……。

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