壊れるほど君を愛してる



*****



あれから彼とすれ違う度に笑われるようになった。それがとても辛く感じた。


常に誰かの目線が私に突き刺さっていた。


彼と出会わないように早帰りの月曜日はトイレに寄ってから友達と遅く帰ったりした。


そんなある日、私は友達と一緒に学校の自転車小屋に来ていた。友達が自転車通学だからだ。


いつも通りに自転車小屋で友達と話していた。その瞬間だった。


「おい!」


誰かに呼ばれたような気がして振り向くと、急いで窓を閉めた彼の後ろ姿が見えた。私はそれを見て唖然とした。


顔を覚えられてしまったことによって、こんなことを密かにされるようになってしまったのだ。


なぜか知らないが、先輩達の中でなく同学年でもそれは噂になった。私は学校での居づらさを感じていた。


私は陰で何かを言われて心が崩壊しそうになるぐらいだった。それでも頑張って生きていた。


そして、部活の体育館割も冬用に変わる。水曜日にサッカー部と一緒になるから少し怖かった。だけど、彼は三年生で引退しているので居ないはずだ。


そう思って部活に来ると、黒い制服を身に纏う人が見えた。私はそれで頭を抱えた。どう考えても彼らだろう、と気付いた。


今の時期にあり得ない半袖半パンの体操着でサッカーゴールを後輩と一緒に運ぶ彼を見ていた。私はすぐに部活の準備を始めて練習に集中した。



――アイツがあの後輩?キモくね?


――本当、不細工な子だね。ストーカーとかヤバっ。



次の日、どこに行ってもそんな噂ばかりが聞こえた。明日から三連休だから我慢しようと思った。


だけど、噂には耐えられなかった。


私は家族旅行を終えた日曜日。



―――人生初のリストカットをした。



想像以上に血は出ないもので、諦めて素直に寝た。


重たい体を起こした月曜日。私は絆創膏を左手首に付けて学校に行った。


ずっと彼を避け続けるようになった。会いたいけど会いたくない。会ってはいけないのだ。


ずっと噂を言われ続けながら、私は楽しみな修学旅行まで生きていけるのだろうか。


もう、死んでしまおうか―――



*****



『先生、後輩くんが全然言う事を聞きません!』


突然、自分と似たような声が頭に浮かぶ。体育館で女子卓球部が居る。その中にポニーテールをした女の子が居たのが思い浮かんだ。


俺はあの時、何をしていたんだろう。この本と何か似ているような気がする。


これが記憶の一部だとするのなら、俺は普通の奴じゃないのか。俺は普通に生活していただけだろうか。


あの夢の中のようなことが起きるのはどうしてだろうか。



“翔が読むと悲劇が起きる”



この小説に何か隠されているのだとしたら、全て読んだら俺はどうなってしまうのだろうか。


そんな時に電話が鳴った。優樹からだった。俺は電話に出た。


そんなこと気にしないでおこう、俺はそう思った。



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