極上御曹司に求愛されています

「大騒ぎって、どうして? こんなつまらないもの、出版するなとか言われたのかな」
 
芹花は悠生に連れられてブライダルフェアに行った時のことを思い出した。
偶然にも悠生と竜崎楓と知り合いで、挨拶程度だったが二人が言葉を交わすのを間近で見ていた。
明るく人懐こい印象の楓が、まさかそんなことを言うとは想像できない。

「なんでそういう発想になるんだよ。そんなことあるわけないだろう? その逆だ。もともとイラストのファンだった竜崎楓は発売が嬉しくて大喜びしたらしい。で、オビのコメントは任せてくれって手を挙げたってさ」
「えーっ」
「天羽、うるさい。だけどまあ、俺も驚いた。まさかあの世界的に有名な一流モデルがオビのコメントを書いてくれるなんて予想外すぎる」
 
芹花は橋口の言葉にうんうんと頷いた。
オビのコメントが売り上げに影響するだろうことは簡単に想像できるが、まさか、あの竜崎楓がコメントなんて、あり得ないだろう。

「それで、なんだけど」
 
突然のことに黙りこんだ芹花に、橋口が言葉を続けた。

「オビのコメントの締め切りが近いんだ。で、竜崎楓が一度作者に会いたいって言ってて」
 
橋口は芹花の反応ををうかがうように、言葉を区切った。

「会いたい? って、私と?」
 
芹花は後ずさり、眉を寄せる。

「イラスト集の発売が決まっても、天羽が顔出しNGを出したのは知ってるし気持ちもわかるけど」
 
困り顔の芹花に、橋口は言いづらそうに言葉を続ける。

「出版社はかなり乗り気なんだ。フランスのブランドと契約を結んで話題になってるし、何といってものキレイな見た目だ。オビに顔写真を載せてもいいとまで言ってるらしいから売り上げアップは間違いない。どうしても彼女に頼みたいらしいんだ。だから竜崎楓と会ってもらえないか?」
 
普段飄々としている橋口からは想像もできない焦り気味の口調に、よっぽどそれを望んでいるんだと芹花は感じた。




< 131 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop