ダメ女
親知らず
入院の手続きに両親に電話する決まりがあった。

叔父の運転する車で病院まで来て

佐田さんには入院すると伝えた。

両親の反応はいきなりそんな事言われてもという反応らしい。

後で聞いたがそんな電話知らないと言われた。

じゃあ、病院はどこに電話したんだ?

親がシカトしたんだろうと僕は、思った。

祖母の口撃に耐えられなくなり孤独にも耐えられなくなった僕は、逃げ場所を探していた。

それが病院なんて皮肉である。

携帯電話や財布などを預けて六人部屋に通された。

僕は、一番奥の左側のベッドになりベッドで寝ていた。

少しすると初老の男が話しかけてきた。

「みんなに挨拶した?」

「してないんです。」

精神狂って来てるんだからゆっくりさせてくれよと内心は思ったが、隣の人や前の人に挨拶した。

数分後、また挨拶ジジイが

「挨拶した?」

と聞いてきた。

手前の中年の人が

「挨拶、挨拶ってうるせーよ!ほっといてやれよ!」

と言ってくれた。

それから数分後、看護師が来て

「ここ話しかけて来る人いるでしょう?ゆっくり出来ないと思うから隣の部屋に移りましょう。」

と言ってきた。

入院する前に三人の女と会った。

一人は近くの病院の看護師。

一人はヘルパー。

そして○○。

看護師とは、ネットで知り合って僕の部屋で少し話して帰った。

何も感じなかった。

ヘルパーは、中性的で男みたいだった。

そして、○○とはキスをした。

特に理由はなかった。

新しい部屋に案内された。

軽く挨拶をしてベットの上であぐらをかいた。

僕を入れて6人だった。

挨拶ジジイが恨めしそうに部屋の外から僕を視ていた。

「ストーカーかあのじいさん?」

左側のメガネにお腹が出ている30代後半ぐらいの男が僕に聞いてきた。

「さあ?ずっとみんなに挨拶しなって言ってくるんですよ。」

「シカトしてな。」

「あ、はい。」

「で、何が原因で入院してきたの?」

事情を話すと

「そっか、それで入院ね。」

と軽い感じで言われた。

僕は、少し気持ちが軽くなった。

「で、名前は?」

「加藤健太です。」

「俺は、亀ヒロシ、よろしく。」

「はい。」

「そろそろ飯の時間だ。」

亀は出っ張った腹をさすりながら言った。

食事は、意外と美味しかった。

女性病棟も同じ階にあり一緒に衣食住をする。

病院の日常は、暇だった。

みんな、廊下をウォーキングしたり本を読んだり麻雀、オセロ、トランプをしていた。

僕は、日記を毎日書いていた。

推理漫画を読んで推理したりしていた。

知らないうちに寝てしまう。

そうすると夜、眠れなくなる。

頓服を飲んでも眠れない。

隣の亀さんはイビキをかいて眠っていた。

1週間で病院を退院したいと思った。

なかなか、主治医がつかまらない。

2週目、亀さんも夜中眠れなくなった。

二人でイタズラを始めた。

寝ている人に靴を履かせてみたり、ベットの上でジャンプしたりしていた。

亀さんは、女性患者の平良さんと仲良しだ。

ウォーキングしながら話している。

ある日、電気ショック青年と知り合いになった。

「加藤さん。」

「何?」  

真っ暗な廊下で電気ショック青年吉田君と僕は、話していた。

「寝れないですよね?」

「寝れないね。」

吉田君の首は右に曲がっていた。

最初は、近づきたくないNo.2ぐらいだったが話してみると意外に普通だった。

「電気ショック受けて良くなるの?」

僕は、素朴な疑問を吉田君に聞いた。

「いやー、分からないです。」 

実験台にされてる気がして同情した。

「吉田君!」

暗闇からオールバック看護師が来た。

「吉田君!さっき薬あげたよね?眠れなくてもベットにいるのが道理だよね?」

僕は、ドキッとしてしまい自分の病室に戻ってベットの中に入った。

廊下で、まだ吉田君はオールバックに怒られている。

「加藤さん、寝れないの?薬飲む?」

といきなりオールバックが聞いてきた。

「だ、大丈夫です。」

と僕は、答えた。

「そう、じゃあおやすみなさい。」

オールバックは、優しさと厳しさを兼ね備えた人間だった。

日記は、毎日書いていた。

奇人変人の巣窟の病院。

先生と呼ばれてるおじさんがいた。

昔、数学の先生、つまり教師だったらしい。

先生は、最初、普通のおっさんだと思っていたが

ある日突然消えた。

隣の部屋の山田さんというおじさんが先生は独房に入れられたらしいと教えてもらった。

女性病棟を覗いたりしていたらしい。

人間おかしくなりすぎると何をするか分からないと感じた。

僕は、最初の1週間は

「まだ、死にたいとか思ってしまいますか?」

と看護師に聞かれていた。

2週間後に、やっと担当医がつかまり、もう大丈夫だと伝えた。

じゃあ、1ヶ月間だけ入院しましょうと言われた。

いやすぐに出たいんだけどとは言えなかった。

先生は、独房から出て来たら廃人になっていた。
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