『The story of……』
わたしは慌てて、教室から飛び出した。


(こんなところから市原くんを見ていたなんて、知られたくない……)



急いで学校の門をくぐろうとしたところで、


「上総っ!」


「……市原くん」


ユニフォーム姿の市原くんに捕まってしまった。
切らした息を整えるように口元に当てていた手を、市原くんがこちらに伸ばす。



「っ市原くん、血が……」


何故か切れた口の端からは、じんわりと血が滲んでいた。
慌ててハンカチを取り出すより早く、


「えっ……」


市原くんに手を取られ、そのままぎゅっと引き寄せられてしまった。



驚きで声も出せないわたしに、市原くんは、


「隆丑に殴られた」

「っ!!」


わたしを抱き締めたまま、言葉を続けていく。


「……隆丑が上総に惚れてるって気付いた時、俺は……自分の感情を隠して、一歩退いた」


「…………」



「壊したくなかったんだ、隆丑との友情」



二塚くんのことを、誰よりも思ってる市原くんだから……そう思うのは当然なのかもしれない。

< 36 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop