金木犀


「んだよ・・休みの日に・・・」



玄関に行き、ドアを開けると



「おはよ~。」


にっこり笑った奈々が居た。



「え・・・・なんで・・?」


いきなりのことに固まる俺



「トヨ君に住所聞いたの。昨日も仕事だったって聞いてたし、ダイくんからメールでけいちゃん最近疲れてるって言ってたし、多分今日無理だろうなーって思ってて。」



そう言う奈々の服は、ニットのふわふわの帽子にムートンの短い丈のジャケット、ニットのワンピース。茶色のカラータイツにムートンブーツ。


どっからどう見ても今からデートですって言ってるような服。



俺と出かけるためにお洒落したんじゃん・・・



「お昼ご飯、オムライス作るね。けいちゃんまだ寝てていいよ。」


そう言って、あっけにとられてる俺の横をすっと通り、部屋に入ろうとする。



「わーっ待ってって!」



俺は焦って奈々の腕をつかんだ。



「え・・・なんで?」



「着替えるから、外で待ってて?」


俺が言うと


「いいって、疲れてるんでしょ?明日も仕事だし、家でゆっくりしてたらいいよ。」


きょとんとした表情で俺を見上げる奈々。


「ここ数ヶ月、まともに片付けなんてしてないんだって。」


「じゃ、掃除してあげるよ。家事は得意だから。」


「いや、いいって、せっかくの休みなのに、もったいないじゃん。外行こ?」



実はちゃんとしたデートって今日がはじめてだったりする。


彼氏らしいことなんてしたことないし、奈々の見たい映画に連れてってやりたい。



いや、それに寝起きだし、いろいろさ。困るじゃん・・・


「・・・・・家・・入っちゃダメ?」


上目遣いで、寂しそうな顔で俺を見る奈々。


「いや・・・別に・・・そう言うわけじゃ・・・」


言葉に詰まる俺に対して不信感を抱いたのか、泣きそうな顔になって


「ごめん、でしゃばりすぎたね・・・・・外で待ってる。」


そう言って、下を向いてしまった。





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