聖なる告白
心地よいお湯の中、私は目を閉じて島の音に耳を澄ました。


(風向きかな……海水浴場のBGMがここまで聞こえる。それと、あれは船のエンジン音だ)


宿のすぐ近くに漁港がある。八月は毎朝広場で魚市場が開かれると、宿のおかみさんが教えてくれた。魚介類が大好きな私は、早起きして買い物しようと即座に予定した。


(クール便で実家にも送ろうかな。この前帰省したばかりだけど……)


なんて考えるうちに、だんだん眠くなってきた。私は慌てて風呂を上がり、浴衣に着替えて大浴場をあとにする。


「長湯したら喉が渇いちゃった」


部屋に冷蔵庫はあるが、中身は空っぽだ。自動販売機がロビーにあったことを思い出し、立ち寄ることにした。


「ビールもいいけど、お酒は夜にゆっくり飲みたいから、お茶にしておこう」


手提げバッグから小銭入れを取り出し、緑茶のペットボトルを買った。部屋に戻ろうと歩きかけて、ドキッとする。
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