俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
どうしてこの人はこんなにも簡単に私の心を揺さぶるの?


いつもと同じ、答えの出ない問いかけが私の心の中を駆け巡る。

つい最近までは、この人にどう思われようと気にもしなかった。

それなのに今は彼の心の内を知るのが怖い。


それはなぜ?


「髪がまだ濡れている。このままじゃ風邪をひく」

呆れたような口調の采斗さんが私の髪をタオルで丁寧に拭いてくれる。

その手つきの優しさに胸が詰まった。


「平気、いつもこうやって髪を拭いて軽くドライヤーをかけているから」

お風呂に入ったので化粧は落としている。

素顔をさらすのはさすがに恥ずかしい。


「これまでは、だろ。今日からはダメだ。ちょっと待ってろ」

そう言ってリビングを出た彼はドライヤーを手にして戻ってきた。


「座って」

腕をとられて、ソファに誘導される。


もしかして髪を乾かそうとしてくれているの?


「じ、自分でできるから」

「いいから」

強引に足の間に座らされてしまう。


まるで背後から抱きしめられるような体勢に心が落ち着かない。

長い足に包まれて、目のやり場に困る。
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