俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
自宅に戻る時間が永遠にも長く感じられた。

詠菜を心配する秘書になにかあれば連絡すると告げて、帰るように伝えた。


笹野も裏表のない詠菜をとても気に入っている。

俺の妻は大勢の男に好かれていて夫としては気が気ではない。


エレベーターの扉が開く時間さえもどかしく、慌ただしく玄関ドアを開ける。

「詠菜! いるのか?」

飛び込んだ室内は真っ暗で静寂が広がっていた。

人の気配は皆無だ。


「なにが、あったんだ?」

冷静になれ、と自分に言い聞かせるが焦りばかりが募る。

スーツのポケットからスマートフォンを取り出し、リビングに向かい、電気を点けた。


ダイニングに視線を向けた時、一枚の紙が床に落ちているのが見えた。

近づいて、拾い上げた瞬間血の気が引いた。


「なんで……」

それは俺と詠菜の署名がされた離婚届だった。

離婚届を握る俺の指が情けなくも震えていた。


まさか、これの存在に気づいた? 

だが用意するように言いだしたのは詠菜だ。


なのになぜ今になって記入した?

体温を分け合った日、お互いの想いが通じたと思っていた。


それは俺の独りよがりだったのか?
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