俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
この人は、目立つ上に周囲の人を惹きつけてやまない。

きっと今頃、さらにあれこれと噂されているに違いない。


こんな人目につく場所で話し込んだのもすべて計算なの? 


その考えに思い至った時、なぜか胸にチクリと棘が刺さったような痛みを感じた。

「詠菜、浮気するなよ?」


背中に回された腕に、微かな力が込められたのは気のせい?


「お前は俺の大事な、たったひとりの婚約者だ。それを忘れるなよ?」

いたずらっ子のような眼差しを私に向け身体を離し、指を絡めてくる。


そのまま半ば放心状態の私を披露宴会場までご丁寧に送り届けてくれた。

その間、頬の熱はずっと下がらなかった。


自分自身に起こった現状についていけず、せっかくのご馳走も味がまったくわからなかった。

もちろんあの美形副社長は披露宴会場周辺の女性たちの目をしっかり釘付けにしていた。


彼が去った後、私が質問攻めにあったのは言うまでもない。

敏腕副社長の狙い通り、婚約者なのよねと尋ねられ、機械のように頷くしかなかった。

そんな混沌とした状態の中で、遠目に私を見ている孝也の鋭い視線に気づく余裕はなかった。


幸せのお裾分けをいただきに参加したはずの結婚式は、思いがけず不運の始まりになってしまった。

二次会の終了間際まで質問攻撃は続き、自宅に帰り着いた時には違う意味で疲労困憊だった。
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