俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
6.「俺の妻だとしっかり自覚しろ」
八月初旬を迎え夏本番といった強い日差しが眩しい今日、私たちは婚姻届を提出する。


区役所で待ち合わせ、記入内容の確認をした後、彼は婚姻届を写真におさめてくれた。

しかも区役所の人に頼んで記念にとふたりの写真まで撮ってもらっていた。


形式上の妻にどうしてそこまでするのだろう?


昨夜、実家に迎えに行くから区役所まで一緒に行こうと再三言われた。

けれど気恥ずかしさもあり、断ってしまった。


私の選択は間違っている?


ここ最近ずっとそんな自問自答を繰り返している。

采斗さんといると鈍い胸の痛みと戸惑いを時折感じてしまう。


“ご結婚おめでとうございます”と婚姻届の受理を告げられた時はまったく実感がなかった。

けれど彼は私の手をしっかりと握りしめて、職員の方に笑顔を返していた。



「結婚式はどうする?」


区役所からの帰り道。

采斗さんの自宅は徒歩圏内にあるため、ふたりで並んで歩く。

繋いだ手はそのまま離される気配がない。

婚姻届の提出のため、私は午後に休みを取得していた。


「必要ないです」

「なんで?」

「私たちの結婚には期限があるので……」


別れが決まっているのに結婚式を挙げてどうするの?


婉曲的に口にすると、なぜか彼の纏う雰囲気が硬質なものに変わる。


「――ああ、なるほど。わかった、必ず一年後に結婚式を挙げる。約束だ」

きっぱりと告げられて返答に窮する。
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