~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
(くれないの丘)
「おい、起きろよ!」

翌朝、夏海は体を揺すられ、目を覚ました。
康介だった。
気付かないうちに、寝過ごしてしまっていた。


「ごめんなさい。すぐに仕度するわ」


「なんだよまったく、急いでくれよ」


夏海は、手早く朝食を用意した。
双子を育てながら、家事をしてきた夏海は、手際が良かった。
康介は仕事ばかりで、家事や育児は女の仕事。いや、仕事とも思ってないんだろうな。
夏海は、淡々と朝食を作り終えると席についた。


「珍しいね、君が寝坊するなんて」


康介はご飯を掻き込み、味噌汁を口へ流し込こんで飲み込んだ。


「じゃあ、行ってくる」


そう言うと、いつものように出勤した。


「ああ、なんだか今日は慌ただしいな」


匠が起きた。


「今日は早いのね」


「うん、今日は朝からバイトなんだ。バイクで、隣の玉山市まで行くんだ」


「え、隣り町の?玉山で何するの?」


「うん、今バイトしてるスーパーの店長に頼まれてね、娘さん小学生なんだけど、今入院しているんだ。今日誕生日なんだって。
でも、スーパーって終わるの遅いだろ?昼間のうちに、プレゼント届けたいんだってさ。俺、今日休みだけど、人助けさ。あ、俺パンがいいや」


同じ双子でも、聡に比べると匠は、普段何やってるのかあまり話さない。
でも、こんな優しいとこもあるんだと、夏海は感心した。


「なんだ匠、早いじゃない」


聡も起きた。


「今日、コンビニ早番で、午後から講義だから。あ、俺もパンね」


二人とも、パンを頬張り出かけて行った。
良い子達ね。夏海は、幸せな気持ちになった。
苦労して、双子を育てた甲斐があった。
夏海が空を見上げると、抜けるような青空が胸にしみた。颯太と出会ってから何だか妙に色んな事に感動するな‥。


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