~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
(日常)
「ただいま。」


康介が帰って来た。夏海は、慌ててスマホを閉じた。


「ああ疲れた。部下の不始末でてこずったよ。最近の客はクレーム好きだしな」   

康介は苦笑すると、夏海の差し出した水を飲み干した。


「ご飯は?」


「ああ、部下と赤ちょうちんでちょっと飲んだだけで、ろくに食べてない。取りあえず飯」


「ねえあなた、スマホあるでしょ?LINEも出来ないの?」


夏海は不機嫌そうに言うと、ご飯とお味噌汁をよそった。


「わかってるよ。だけどそんなに遅くなった訳じゃないし、部下の手前みっともないじゃないか」


康介はそういうと、ご飯をいっきに頬張った。


「あなた、ゆっくり食べないと体に毒よ。もう…」

そう言いながら、夏海は思った。
そう、あなたはいつもそうなのよ…自分勝手で、私の言う事なんて聞かないんだから。
夏海は、康介の顔を見た。


「もう50になるのよ、健康でいてくれなくちゃ。住宅ローンだってまだ残ってるんだから」


康介は、チッと舌打ちした。
お前はいつもそうさ、俺が心配なんじゃない、先行きの生活が心配なだけさ。


「お茶!」


康介はぶっきらぼうにそう言うと、テレビに視線を投げた。

夫婦なんて長い間一緒にいるとこんなものだわ。楽しくもない会話…うんざりする…。
夏海はため息をつき、お茶を入れた。


「聡と匠はどうした?まだ帰ってないのか?」


康介がおもむろに口を開いた。


「ええ、二人共バイト終わるの遅いからってメールがあったわ。まったく、大学そっちのけでバイトしてるんだから」


「おい、ちゃんと大学だけは卒業しろって言っとけよ。そうじゃないと、まともに就職出来ないからな」

康介はそう言うと風呂入って寝るよと夏海の愚痴を避けるように行ってしまった。


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