もういいかい?
フェリーを降りて表に出ると、早速沢山のシカがお出迎え。

みぃが想像していたシカは、バンビだったみたいで………

大きな角を揺らして近づいてきた雄ジカに尻込みする。

「ねぇ、航。
シカって……………こんなに大きいの?」

さっきまで、梓先生に写メを送ると言って張り切っていたのに

今はビビって、携帯を出すどころではない。

「ちょっと航~
着いてくる~
ねぇ、航!」

シカを避けてウロウロするみぃに

適度な距離をとって追い詰めるシカ。

半泣きのみぃは、笑いながら携帯を撮っている僕にご立腹だ。

「みぃ、手のお菓子をカバンに入れてごらん。」

せっかくアドバイスしたのに

お菓子を入れるために出したポケットティッシュに

沢山のシカが寄って来てしまった。

「航!助けてよう~」

本気で泣き出すみぃの手から、ティッシュを取り上げると

シカが僕に着いてくる。

少し離れてティッシュを収めると、くれないと思ったのか

シカは、他の人に向かって歩き出した。

「航~
大丈夫~?」

さっきは笑いながら携帯を撮る僕に、泣きながら怒っていたのに

シカを遠ざけた僕は、みぃのヒーローになったみたいだ。

「シカ………怖かった。
アズを笑えない……………。」

これからずっといるんだけどなぁ。
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