上司との結婚は致しかねます
11.忘れたキスは

 朝、あられもない姿に悲鳴を上げる。
 シーツを手繰り寄せ、再びの悲鳴。

 着衣が乱れて素っ裸よりもなんだか生々しい。
 彼も朝、出かけたままの姿で上のシャツが乱れている。

「ん……。藤花。ダメだよ。
 そんなところにキスしたら。」

 ね、寝言が危ういんですけど!!

 確かに寝ているみたいなのに両手を伸ばされて引き寄せられた。
 手は自然に服の下へ………。

「ちょっ、俊哉、さん?」

「ん?うん。気持ちいいこと、しよっか。」

 隠そうとしない夜の顔を正す為に両手で頬をたたく。

「起きて!起きてください!!
 もう朝です!!清々しい朝ですから!」

 それなのに私の手を捕まえて手のひらにキスをし始めた。
 まだ寝ぼけてるのか、酔いが醒めていないのか。
 どっちにしてもタチが悪い。

「今なら覚えてるからいいだろ?
 しよっか。」

「しません!」

「藤花ちゃん。」

「しません!!」

「いい。勝手に味わう。」

「ん!!しないったら!」

 バチン。
 朝から思いっきり人の頬をたたいてしまった。

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