上司との結婚は致しかねます

 作ってもらったから片付けくらいはしようと思っていた。
 そんな私の気持ちを見透かすように俊哉さんは私へ言葉をかける。

「その顔のままで行くなら俺はそれでも構わないけど。
 ま、あんまりその顔を他の奴に見せたくないな。」

 指摘されて、ハタと気づく。

「わっわっ。見ないでください!!」

 そうだった。何、くつろいでるの。
 めちゃめちゃすっぴんだし。

 同居していても家であんまり顔を合わせない彼にすっかり忘れていた事実。

 何度かすっぴんを見られているような気もするけど、その時は気持ちも無かったせいか何も思わなかったけど。

 今は恥ずかしくて仕方がない。

「今さら慌てるとか、おかしな奴。」

 半分馬鹿にされて頬を膨らませつつも、顔を隠しながら部屋へと逃げ帰った。

 くそぉ。
 完全武装してから文句を言ってやる。

 心の中で宣戦布告しながらも顔は緩んで仕方なかった。

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