上司との結婚は致しかねます
15.大切な人から大切な人へ

 結婚式は盛大で、けれど妊娠しているからと大事をとって休憩をたくさん挟んでくれることになった。

「バージンロードを妊婦さんが歩いていいんですか?」

 という質問をプランナーさんに聞いたのは今や笑い話。

「再婚される方もいらっしゃいますし、清い気持ちで歩かれれば大丈夫ですよ。」

 と、優しく答えてもらえた。

 そのバージンロードの扉の前に父と立つ。

「お父さん。今までありがとう。」

「分かっとる。今、言うとダメじゃ。
 いい男で歩かなかんで。」

 お父さんは既に赤い顔をさせて涙を堪えているのが分かった。

「昔、ショッピングモールに藤花を置いて帰ったのを覚えちょるか?」

 突然の質問に面食らいながらも「うん」と小さく頷いた。

「可愛い可愛いで、たくさん藤花に買い物してなぁ。
 忘れ物があったらいかんと、荷物の心配ばっかりしちょって。
 大事な藤花を忘れて。」

「そんな……理由……。」

 小さい頃にどういう説明を受けたのかは忘れてしまった。
 大きくなってから「うっかり忘れられた藤花」という話で笑い話だった。

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