犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら


そんな私に気弱になる様子もなく、浅香はフッと笑って私の歩幅に合わせながら歩き始めた。


そして、そのまま私が連れていかれたのはプチプラのコスメを扱うお店だった。


「なに?やっぱり視察?」


浅香の様子を伺いながら聞く私に、
「お前、ほんと俺の話なんも聞いてなかったんだな」と笑われてしまった。


「とりあえず、俺についてこい」


歩くペースを早めて私の前をスタスタと歩く浅香の背中を見ながら、言う通りに彼の後ろをついて行く。


色々なブランドのブースに目を光らせて、気になったものを次から次へと手に取って見ていく浅香。


やっぱり視察じゃない。なんて思っていると、店員さんに「なにかお探しですか?」と話しかけられた。


「い、いえ...あの...」


と口ごもっている私の横にすっと戻ってきた浅香は、


「実は彼女に似合うコスメを買いたくて。
今のトレンドってどんなものですか?」


と完全よそ行きの綺麗な笑顔で店員さんに話しかけた。


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