秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

大聖女様から離れない私に対して、男性らは苛ついたのか、そう叫んだ一人が私の背中を踏みつけるように、蹴り飛ばす。

うっと息が止まりそうになったところで今度は複数で次々と蹴り飛ばしてきた。背中だけではない。横腹、足、もう全身ドカドカと蹴られている。

痛い…‥痛い。身体中、痛みだらけだ。息が詰まりそう。

でも、ここで屈するわけにいかない。ローズマリー令嬢の思い通りにはさせない。

もう、逃げない。何からも逃げることはしないんだ。

助けが来るまで堪えないと……!



そう思って、痛みを堪えて歯を食いしばっていた……その時だった。




一瞬、私を襲う蹴りの連続がピタリと止まる。

上方から、フワリと温かい風が流れ込んできたような気がした。

同時に、辺りがざわついたような気もする。

降り立つ足音。鞘から剣を引き抜く、金属の擦れる音。

そしてーー。



「ーー彼女に触るな!……退け!」



その声が耳に入って、ハッと顔を上げた。

まさかここで、その声が聞けるなんて……思いもしなかったから。

でも、視界に映ったのは、あの愛おしく思える金髪と紫水晶の瞳を持つ彼で。

私たちに襲い掛かる男性らに剣を向け、薙ぎ払う彼の姿だったのだ。



……アルフォード様!



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