さよならのキスと最後の涙
始まりのキスは雨の中で
俺は宮内天(みやうちてん)。高校二年生で、部活は吹奏楽部に入っている。フルート担当だ。将来の夢は弁護士になること。得意科目は数学。

今日も授業が終わると、かばんを持ち、足早に音楽室へと向かう。急ぐのには、理由があった。

音楽室からは、きれいなピアノの音が聞こえてくる。ベートーヴェンの月光だ。

その音を聴くと、胸が高鳴る。俺はドアを静かに、しかし急いで開けた。

ピアノを弾いている人は、いつも同じだ。顧問の先生などではない。一人の女子の先輩だ。

「今日も一番乗りね。天くん」

ピアノを弾くのを止め、その先輩は微笑む。

「先輩のピアノを独り占めできますから」

俺が真面目にそう言うと、「ありがとう」と先輩は言いながらピアノをまた弾き始める。

長い黒髪をポニーテールにした雨宮夕日(あまみやゆうひ)先輩は、吹奏楽部の部長だ。ホルン担当。しかし、ホルンだけでなく、ピアノやバイオリンなど様々な楽器を弾くことができる。
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