イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「すっごく深刻そうに見えたから心配したのに」
「チーズ入れるか? 苦手じゃなかったよな」
「好き嫌いはあんまりない方だよ。こないだ行ったお好み焼き屋さんのメニューで、餅チーズってあったね。オーソドックスなのしか知らなかったから驚いた」
「牡蠣も美味い」
「そんなのも入れるの……」
「苦手か?」
「好きだけどなんか贅沢だね」

スーパーの看板が見えて、歩実の歩調が少し早くなった。暑いから、早く冷房の効いた店内に入りたいのかもしれない。
一歩前に出た彼女の手を、とっさに、本当に何げなく、掴んだ。

緩やかになった彼女の歩調。髪から覗く赤くなった耳を見て、なんだかとても、愛おしくなった。




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