イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

『行く! 行きます!』

と動木さんの手からチケットを奪い取った私は、翌朝早くの新幹線に乗り関西までやってきた。

ざざ、と波の音が聞こえる。
動木さんに教えてもらった場所は関西の海際の町で、まだそれほど拓けていない土地だ。その、臨海公園のベンチに私は座っていた。

あちこち仕事で動き回っている郁人を捕まえるのは大変だろうから、と動木さんから郁人に臨海公園に行くようにと連絡してくれている。

待っている間、石畳の上をうっすらと覆う砂を足でかき寄せて暇を紛らわせた。早く会いたくて、どうしても気持ちが落ち着かない。

ふと、どういう伝え方をしたんだろう?
と気になった。
どうも、人をからかったり驚かせたりするのが好きそうな性格だ。
私が来ていることはわかってるんだろうか?

「……歩実?」

その時、ざりっと砂を踏むような足音と、大好きな人の声がした。
ぱっと顔を上げる。そこには、心底驚いたような顔の郁人がいた。

「動木さんから、もう会えるって聞いて。来ちゃった」
「ああ、この仕事が終わったら、帰るつもりだった。ただ、何日とは約束できなかったから」
「うん」
「後少しだと思いながら歩実の声を聞いてしまうと、全部放り出して帰りたくなる気がして」
「わかってる」

不器用で口下手同士だ。

その点では分かり合えるのが、私たちのいいところかもしれない。


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