恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 そんな時に先輩である理央からある画像が届いた。
 律紀は、その画像を見た瞬間、思わず声をあげてしまいそうになったぐらい驚いた。

 
 右手の中に埋まっていた鉱石を見たからではない。

 その手と一緒に写っていた、彼女のスマホに付いた割れたマラカイトのキーホルダーを見つけたのだ。


 「これは、夢ちゃんと交換した、僕のキーホルダーだ………。」


 右手の鉱石よりも、少ししか写っていないキーホルダーを見つめていた。
 もちろん、光る鉱石というのにも惹かれるけれど、ずっと探してきた人の手がかりをやっと見つけたのだ。

 喜ばないはずもなかった。


 律紀はすぐに理央に連絡をして事情を話した。楽しいもの好きの彼は、喜んで律紀に夢の職場を教えてくれた。
 連絡先を教えてくれなかったのは、「彼女に許可を取ってないから。」という理由だったけれど、今思えば、彼が面白いからという事だけでそうしたように感じている。

 
 3時間彼女を待つ間、沢山の女性を見たけれど彼女らしい人は見つからなかった。
 律紀も彼女とは小さい頃にたった30分ぐらい話しただけなので見つけられるか心配だった。

 けれど、その不安はすぐになくなった。

 職場から出てきたある1人の女性。
 律紀は「あぁ、彼女だ。」と、すぐに夢を見つけることが出来た。

 茶色のふわふわした髪に、細身の体、そして大きな瞳。少し元気は無さそうだったけれど、きっと笑ったら昔の彼女そのものになるだろう。律紀はそんな風に思った。


 普段は初対面で上手く話せるタイプではなかった。
 けれど、律紀はまっすぐに夢に向かって歩いていった。彼女に惹かれるように。
 そして、やっと約束を果たせる、謝ることが出来る。
 そう思いながら…………。

 


 「すみません。……あの、十七夜夢さん、ですか?」


 そう話しかけたのだった。


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