恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
エピローグ
エピローグ
「んー………難しいなぁ。。。」
夢は、鉱石を見つめながら唸っていた。
テーブルの上にはスケッチブックと鉛筆などの画材。そして、その前には1つの鉱石があった。
花と虫が入った琥珀。
昔、夢と律紀が鉱石を交換した時に、夢が律紀にあげた鉱石だった。
夢は先程から、その琥珀をジーっと見つめてはスケッチブックに描いて、納得いかずに消す……そんな事を繰り返していた。
「そんなに綺麗なのに……何で消しちゃうんですか?」
「あ、律紀くん。お風呂あがったんだね。」
「僕には、消すのが勿体なく見えます。」
今日は、仕事終わりに律紀の家にお邪魔していた。律紀はやはり料理は得意ではないようで、外食や酷いときには食べないという生活をしているのだと、付き合ってから判明した。そのため、定期的に律紀の家に来ることにしていた。
もちろん、理由はそれだけではない。
本当の理由は、律紀と2人で過ごしたいからだけれど、恥ずかしくて本人には直接言えるはずもなかった。
「ここのキラキラした所がもう少し……んーバランスも悪いなぁ……。」
「1番始めに僕たちの思い出深いものを描いてもらえるの、嬉しいです。」
「だって、これが私と律紀くんとの出会った思い出だもん。忘れてしまっていても、大切な鉱石だよ。」
幼い頃に、お互いの鉱石を交換し、そして絵本を作る約束をした思い出。
まだその時の記憶は思い出せない。けれど、夢はその約束を現実のものにするために、少しずつ絵を描くことにした。
もちろん、出版などは何も決まっていない。けれども、描かなければ何も始まらないと思ったのだ。
律紀と話をすすめながら、少しずつ理想の絵を描いていこうと思っていた。
そして手始めに描いたのは夢が律紀にあげた琥珀の鉱石。律紀はとても大切にしていてくれたようで、リビングに飾られていた。
それを律紀の家を訪れる度に、眺めてスケッチしていた。