恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 「今日は、気になるものがありませんでしたか?」


 いつの間にか、コーヒーを準備し終えたのか、律紀がすぐ隣まで来ていた。
 夢はそれだけで、またドキリとしてしまう。


 「いっぱいあって、少し悩んでしまいました。」
 「じゃあ………前回と雰囲気は違いますが、同じ緑のものを選んでみますか?」


 そう言うと、律紀は夢が届かない棚の上段にあった鉱石の箱を取り出した。


 「これです。」


 律紀が選んだのは、新緑のように爽やかな緑色をした鉱石だった。


 「これは、グリーンガーネットですか?」
 「正解です。ツァボライトといも言われていますね。今回はこれにしましょうか。」


 律紀は、その鉱石は持ってソファに座った。
 夢は、その鉱石がとても綺麗でテーブルに置かれている時もジーっと見つめてしまった。


 「気に入りましたか?」
 「あ、すみません!あまりにも綺麗なので、見いってしまって。」
 「いえ。これは私の私物なんですけど、気に入っているのでここに置いています。」
 「宝物、なんですね。」
 「………そうですね。でも、1番の宝物はここにはないんですよ。今度、お見せしますね。」


 宝物の話しをしているはずなのに、律紀は何故か切ない顔をして話しをしていた。
 夢は彼が時々見せる、その表情がとても気になってしまっていた。
 けれど、その話をする前に彼はすぐに、いつものニコニコとした表情に戻ってしまうのだ。

 それを見ると安心しつつも、心のどこかにひっかかってしまう。



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