恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「夢さん、左腕に何かあると大変なので、僕の腕をつかんで。」
「え………腕を組むってこと?」
「はい。そうですけど………?」
自分が何かおかしいことでも言ったのか?と、不思議そうな顔で夢を見つめる律紀。
やはりこういう所は無垢なままだった。
けれど、最近は恋愛ものの漫画を見ているからか突然ドキッとする事を言ったり、したりしてくる事があった。
けれど、やればいいと思っているのか、脈略のない事をし出すので、夢は驚いてしまう事が多かった。
「じゃあ………お願いします。」
「はい。どうぞ。」
夢はおずおずと彼の腕を左手で掴む。
手を繋ぐよりも彼との距離が近くなってしまい、夢はどうしていいかわからずただまっすぐ前を向いて歩いた。
律紀はどんな顔をしているのだろうか。
いつものように、ニコニコと微笑んで平然としているのだろう。夢はそう思いながら、目線だけで彼の横顔をこっそりと見つめた。
すると、律紀の頬や耳の先が赤くなり、開いている手で口元を隠しながら、夢と同じように前を見て歩いていた。
その隠していた口元は夢からは丸見えになっており、彼の唇が上がっているのがわかった。
夢はそれを見て、彼も同じように照れているのだとわかり、更に顔を真っ赤にさせてしまった。
2人は付き合いたての初々しい学生の男女のように、ぎこちなく腕を組んで、恥ずかしそうにしながら冬の街を歩き続けた。