恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「はい、抜糸も終わったし、もう大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。理央さん。」
理央の小児科の病院は木目調の家具でそろえられており、とても落ち着いた雰囲気だった。待っている間、横になってもいいように、大きめなソファがたくさんあったし、絵本やオモチャもあった。ところどころに、可愛い絵なども飾っており、どこかの保育園のような雰囲気だった。
理央に抜糸をしてもらった右手を、夢はジッと見つめる。まだ傷跡はあるけれど、ずいぶんすっきりしたなと夢は思う。
小石だとしても、異物か体の中に入っていたのだから当たり前かもしれない。
「夢さん………、俺が聞いていいの事かわからないんだけど、律紀とケンカでもした?」
「え………?」
夢がハッとした表情を見せたので、理央は納得したように苦笑した。
「いや、この石を取ったのは律紀に渡すためだと思ってたから。渡してきたのかなって思ったけど、なんか……その………夢さん、昨日泣いたみたいだから。」
理央は、夢が泣いてしまったことに気づいたのだ。しっかりと目の腫れを化粧で隠したつもりだったけれど、隠しきれてなかったのだろう。
夢が返事に困ってしまうと、理央は担当の子どもをあやすように、優しく夢に話しかけた。
「僕は、理央と夢さんが上手く言っていると思ってたんだ。俺はこれでも、理央の事は大切にしててね。あいつは研究者ということもあって、変わり者ではあるけど、いいやつなんだよ。だから、夢さんがあいつと付き合ってくれたは、嬉しいなって思ってた。それに、そうだと思ってたんだけど………違うかな?」
「それは違います!………それは………。」
夢は慌てて否定をしてしまうと、理央は驚いた顔で夢を見つめた。
夢だって、本当ならばそんな関係になりたかった。けれども、無理だったのだ。
嘘でもあっても、そんな事を言われるのは辛かった。